ナノメートルのエトセトラ


日々エンジニアは、非情に難しい表現をしているのは、事実ですが、今回は少し噛み砕き、細かいところは、割合しています。

 

今回は、主にナノメートルに迫ります。

 

HDDの読取装置(Head Disk Assembly)では、データを記録しているプラッター(通称メディアと呼ぶ)という磁気媒体に浮上し、データアクセス時にデータ記録面を往来して、データの読み書きを行っている装置です。

 

読取装置はプラッターとの間に、空気の流れによる、空力特性を活用した浮上方法を採用しています。
では、読取装置が浮上する際の隙間は、どのくらいなのでしょう?
一般的には、読取装置とプラッターの隙間は、おおよそ0.2~0.3nm
(ナノメートル)程度です。(一部例外でさらに少ないものもある)
  • 1mm(ミリメートル)をnmに変換すると、1,000,000nm
  • 人間の髪の毛の直径は、0.1mm すなわち、100,000nm
  • たばこの煙の粒子の直径は、200nmとされています。
読取装置は、想像もできないくらい、隙間を維持し、プラッターに浮上しデータの読み書きをしていることになります。
プラッターは、一般的に、1分間あたり5,400~7,200回転しているものから、ハイエンドモデルになると、10,000~15,000回転するものも存在します。

 

例えば
7,200回転の場合、プラッターの最外周速度は、時速に換算すると、100km以上、
15,000回転の場合、時速200km以上のスピードで高速回転していることになります。
もしも、
20,000回転程度のモデルが登場すると、新幹線くらいの速さで回転している計算になります。

 

プラッターは高速回転(Ready状態)しており、読取装置は、想像もできないくらいの隙間で浮上していることから、

HDDが稼働している時に(データを読み書きしている状態)、微弱な振動でも大問題になります。
では、どういう問題が発生するのでしょう?

読取装置とプラッターの接触による、双方のダメージ

お客様より、

 

外付けHDDを机の上から床に落とした。机の上で、倒してしまったなど、よく伺います。

・プラッターの表面に、読取装置が接触したことで出来る、キズが残りデータが読めなくなる。
・キズの影響で、部分的に、荒地化する。
荒れたプラッター上では、適正な空気の流れや、読取装置が適正に浮上できず、さらには、プラッターへキズ(ダメージ)をつけ、悪化させてしまうことや、データの読取に影響が出てしまいます。
※スクラッチキズなどへ発展し、データ復旧が出来なくなる。(画像参照)
また、読取装置やプラッターは熱によるダメージも懸念されます。
主な部品が金属を加工されて作られている以上、熱による膨張や収縮することは避けられません。
熱による、読取装置・プラッターの変形などのダメージが大きく、誤った場所へ読み書きをしてしまう、オフトラックなど、様々な原因で、故障してしまう主な原因になります。
デジタルデータは何と言っても、アナログデータと違い、劣化はしない
100年300年先でも!
ただし、デジタルデータを格納している機器の耐久性や信頼性が乏しいと感じます。
デジタルデータは、何重にも物理的に保存しておき、データが消失した際、すぐに取り戻せる環境をエンジニアとして、皆様へ提唱を鳴らします。
このことを踏まえ、
パソコンが立ち上がらない、機器の立ち上がりがいつもと比べ遅い、英文のエラーが表示されている、著しくデータの読み書きが遅いなど、いつもと何かが違うと感じたら、その時点より、HDDが再起不能になるカウントダウンが始まります。そこで、私たちエンジニアは、お客様へ
  • 通電しないでください!
  • 機器の再起動はしないでください!
  • 無理にデータをコピーしないでください!
  • 市販のデータ復旧ソフトウェアを使用しないでください!
まだまだ、沢山のお願いをしていますが、代表的なことは、主に4点。
なぜならば、読取装置・プラッターのダメージ・磁気帯剥離などのリスクが大きいためなのです。

プラッターへ重度のキズが入ってしまった場合、データ的に破損しますので、形にはなりますが、

実際、読めないデータとなってしまうことから、データが復旧できないという診断結果になる場合があります。 

プラッターが剥離してしまった場合は、データ復旧できません。

HDD的には、一刻の猶予(カウントダウン)が無いなか、物理的・論理的な障害を抱えたHDDを、誤った処置(上記の主な4点)による、データ復旧ができなくなるリスクを最小限にとどめたいこと。
また、お客様の大切なデータを1つでも多く復旧させたいという願いだけなのです。
2017年6月2日 

 

HNSデータ復旧LAB 代表者 平川 友広